コロナ渦ではありますが、春うららか、眠気を誘う陽気となってまいりました。
年度が変わり、医療技術部のブログ担当者も変わりました。
前任より大分年齢が上がりましたが、より一層にぎやかにお届けしたいと思います。
さて、4月です。(更新が遅れて5月です…)
当院培養室にも新しいメンバーが入ってきました!
そこで、今回のテーマは「胚培養士になる人ってどんな人たち?」
体外受精・顕微授精の治療が日本で始まった当初、
検査技師さんや医師が胚培養士の仕事を兼務していました。
しかし現在では、不妊治療の発展とともに専門性が高くなり、
多くのクリニックで「胚培養士」という
専門の技術屋さんがいるようになりました。
そしてその多くが、農学・動物学系の大学出身者たちです。
ちょっと古い報告にはなってしまうのですが、こんな報告があります。
「我が国における生殖補助医療胚培養士の現状2015」寺田 幸弘先生
日本卵子学会誌 Vol.1 (1), 15–21, 2016
これによりますと、胚培養士の学会認定資格試験が始まった当初、
農学・動物形学系大学出身者の受験者は全体の約30%。
医学系出身者が約50%でした。
ところが、2015年の受験者では約50%が農学・動物学系の大学出身者、
医学系出身者は約10%と大きく変わってきたのです。
なぜか?
不妊治療の現場で行われている技術のほとんどが、
動物たちで行われている技術由来です。
胚培養士を目指している農学・動物学系出身者の多くは、
哺乳動物である家畜やマウスの卵子、精子ですでに
体外受精や顕微授精を用いた研究をしてきています。
そのため、生殖に関する技術と知識は
ある程度持っている状態でクリニックへ配属されてきますので、
クリニック側としては「期待の新人!!」ということになるわけです。
とはいえですね。
もちろん、すぐに患者さんの卵子や精子を実際に扱うわけではありません。
患者さんからの大事な卵子と精子を扱うことになるため、
学生時代の研究と同じように考えていてもらっては困ります。
研究していた頃の対象はあくまでも
「卵子 or 精子」という「細胞」であったわけですが、
医療現場で相対するのは、
「患者さん」の「卵子 or 精子」です。
「間違ってはいけない世界」というのが、胚培養士の働く世界なので、
クリニックへ配属されるときや、認定試験を受ける際には、
当然ながら高い倫理観も求められることになるわけです。
さて、前出の報告には、胚培養士になる男女比率なるものも載っておりまして。
胚培養士の80%が女性なんだそうです。
まぁ…看護師、事務スタッフ、どこを見渡しても、
医師以外で男性は見かけない職場です。
ぶっちゃけ、ここでいきなり男性の胚培養士が一人入っても、
職場に溶け込むのも大変ですよね。
当院の胚培養士は現在、農学・動物学系出身者が8名、医療系出身者が2名。
男性5名、女性5名(なんと、半分は男性ってことです)。
不妊治療は日進月歩です。
ぼーーーっとしていると、知識も技術もおいていかれてしまいます。
全員で、切磋琢磨しながら日々研鑽と勉学に励んでいます。
もし興味がありましたら、こんな書籍も出ています。
エンブリオロジスト 受精卵を育む人たち