テーマ: ラボより
今さら聞けない顕微授精の話
先日、興奮してピエゾICSI(ピエゾ顕微授精)の記事を書きましたが、
そもそも顕微授精のことを記事にしていませんでした。反省。
改めて顕微授精って何?ということを記事にしてみようと思います。
顕微授精とは?と聞かれたら、
人工授精と体外受精の区別がつかない一般の方でも、
「あーなんか病院で?人工的に?こども作るやつでしょ」
くらいの知識は広がってきていると思います。
実際は、体外の環境で卵子と精子を受精させる方法の一種と
表現するのが妥当かと思います。
体外環境での受精方法は大きく分けて2つ。
“通常の体外受精”と“顕微授精”です。
2つの受精方法って何が違うのか?
端的に言えば、精子が卵子に入る過程が違います。
通常の体外受精(ふりかけ法)は、
体内(卵管)で起こるだろう受精の瞬間を体外で再現している方法です。
ですので手技は単純で
“卵子に精子をふりかけて様子を見る”
というものです。
体内と同様に競争に勝った精子が
卵子に侵入し受精が起こる仕組みです。
一方、顕微授精は
“人の目で良好精子を判断し人の手で卵子内に精子を入れる”方法です。
ただし、ヒトの手で行うという点が引っかかる方は多いです。
(宗教観や倫理観は人それぞれですしね)
数年前に培養士の岸田♀がART未経験の患者様へ
アンケート調査を行っていました。
ご協力頂いた方々に深く感謝いたします。
「どっちの受精法を選択したいですか?」という質問への回答です。どん‼‼
男性の結果
女性の結果
やっぱりふりかけ法を選ぶ方が多いです。
顕微授精はマイナスイメージってことですね…。
実際に自然の法則にしたがって受精できるに越したことはありませんので、
基本的には不必要な顕微授精はしない方向で治療を進めます。
当院でもレスキュー顕微授精を導入したり、
ふりかけ法の受精率アップを年間目標にしたり…
極力自然の力で受精できるような環境を整えています。
レスキュー顕微授精とは
通常体外受精成績アップへの取り組み
しかし自然の対義語は不自然じゃありません。
自然の対義語は技術です(←担当者の私見)
当院では顕微授精での受精率を上げるために様々な工夫をしています。
①紡錘体観察
②授精時間の調整
③ピエゾICSI 等
受精率を上げるための工夫をしています。
また、受精操作後から受精までは、
受精卵の成長がタイムラプス動画で観察できる培養器にて培養しながら観察し、
正確な受精の判断を出来るようにしています。
追加料金を頂いて必要な患者様にだけ提供する
というのも1つの手ではありますが、
当院では全ての患者様に一様に提供することで受精卵の獲得数が増え、
結果的には妊娠率の向上、より早い妊娠に繋がると考えています。
自然から少し遠ざかるからこそ、技術をつぎ込む隙間が増えるということ。
通常体外受精は時代遅れ!なんて日も来るかもしれません。
なんなら機械によって顕微授精行われる未来も、すぐ来るかもしれませんね。
あっ顕微授精の時間だ。また次回。