テーマ: ラボより
「がん・生殖医療学会」に参加してきました
今回、水戸で開催された「がん・生殖医療学会」に参加してきました。
近年、1年間でおよそ100万人の方が新たに”がん”と診断されており、
そのうちAYA世代と言われる、思春期・若年成人(15-39歳)は2万人(2%)
となりますが、就学、就職、結婚、出産に直面する世代と考えられています。
がん治療の化学療法や放射線療法などは
妊孕性(にんよう性=妊娠するために必要な力)が低下してしまう恐れがあります。
そこで、治療前に卵子や精子を採取し、ご夫婦の場合には受精卵として凍結保存しておくことで、将来お子さんをもてるようなサポートが可能となります。
がん患者様の凍結保存といっても、
不妊治療中の患者様の凍結保存と同じ技術で行うことができます。
ただし、日本産科婦人科学会が認定した「妊孕性温存療法実施医療機関(検体保存期間)」でしか、患者様が凍結保存にかかる費用の助成を受けることはできません。
該当施設は、宮城県でも 当院を含め4施設のみ!
がん患者様の凍結保存にあたっては、がん治療施設との連携や患者様への十分なサポート体制、長期保管も可能な設備や管理が必要となってくるためです。
今回、当院でのこれまでの取り組みと、現在の保管および使用状況について発表させていただきました。
当院は2007年頃からがん患者様の凍結保存を行っており、
2016年からは東北大学病院を中心としたネットワークが強化され、
当院へ紹介いただくことが多くなっております。
患者様の中には、すでに化学療法や放射線療法を開始している方もいらっしゃり、
得られる精子や卵子の数が厳しいケースもあり、個々に状況は異なります。
また、治療を終え自然妊娠により保管の終了を申し出る患者様もいらっしゃいます。
「がん・生殖医療学会」は、毎回内容盛りだくさんですが、
それだけ多くの分野・職種が関わっていることを参加する度に実感させられます。
治療後の妊娠予後について、腹部への放射線照射は卵巣のみならず子宮にも影響し、流産、早産、低出生体重児増加、高血圧、貧血、妊娠糖尿病とも関連してくる等の発表もありました。
その他、各施設で保存した精子や卵子、受精卵の治療予後や、亡くなったご家族の気持ち、がん治療後の悩み、長期で保管を継続されている方の気持ちについても知識を深めることができました。
今後より理解を深めるとともに、凍結保存および保管施設として何かできることはないかも含めて、院内でも共有していければと思います。
培養士 菊地