テーマ: スタッフコラムラボより
培養士の菊地です。
1月に、多くの培養士が所属する「日本臨床エンブリオロジスト学会」において、「Biopsy(バイオプシー:受精卵の細胞を一部採取する技術)」の講師として実技指導をさせていただきました。
Biopsyは比較的最近の技術で、培養士の操作(顕微授精や凍結保存など)の中では言うまでもなく難易度の高い技術となります。
透明帯(受精卵の殻)から出てきた、将来胎盤になる細胞を
吸い込んで採取します(最小限のダメージで抑えるのが培養士の腕の見せ所)
突然ですが「PGT-A(着床前胚染色体異数性検査)」はご存知でしょうか?
この検査は、世界では広く行われていますが、日本では検査の有効性を検証する研究が始まったばかりで、当院も臨床研究を担当する施設(全国の体外受精実施施設の約1割ほどです)として承認を得ることができました。
実際には、受精卵の細胞を一部採取し検査することで、受精卵の染色体の数が多かったり少なかったり(染色体数の異常)していないかを調べる検査です。
→受精卵の細胞を直接調べる検査がPGT-A
女性の年齢が上がるにつれて、染色体数異常をもつ受精卵の頻度も上がります(残念ながら、受精卵の見た目では正常か異常かの判別がつきません)。受精卵の発育が停止したり、移植をしても着床できなかったり、妊娠しても流産となったりする原因の多くに、染色体数異常が占めていると考えられています。
→他の要因による受精卵の発育不全、流産もあります
同じく染色体を調べる羊水検査は「出生前」検査となり、妊娠されてからの検査となるため、万が一異常があった場合には処置が必要となり、精神的・身体的な負荷は言うまでもありません。
一方で、PGT-Aは「着床前(妊娠に至る前)」にどの受精卵を移植したら良いのか選択しやすくなることから、何回も移植や流産を繰り返すことなく、早く妊娠・出産に至る方法として着目されています。
ただし!!
受精卵の一部を採取する「Biopsy」の操作は、どんなに凄腕の培養士であっても、
受精卵に多少なりともダメージが生じる方法であることをお忘れなく!
よって、今回の「臨床研究」では、ダメージを受けた受精卵でも、
妊娠率や流産率に影響はないのか?を調査する目的で行われています。
→PGT-Aは調査段階の技術
研究に参加できる患者様の対象も、受精卵移植を行い2回連続して妊娠されなかった場合や、2回連続して流産を繰り返された場合などと、制限があります。
詳しくは →着床前胚染色体異数性検査(PGT-A) をご覧いただき、
ご希望の方は申込みフォームよりご連絡をお願いいたします。