ブログカテゴリー: ラボより


こんにちは。培養士Aです。

お久しぶりになってしまいました。


突然ですが「タイムラプス」ってきいたことありますか?


毎年誕生日に顔写真を撮ってつなげて、少年からおじさんになる動画とか、

同じ場所の写真を撮り続けていくと、段々ビルが建って都会へと変わる街とか、

ありますよね。

一定の間隔で写真を撮り続けることで、変化の過程が観察できます。


受精卵もタイムラプス培養することにより、成長過程の観察ができます。



↑これらがタイムラプス培養器!(種類がいくつかあります!)


タイムラプス培養器にはカメラが内蔵されていて、

10-15分に1回ずつ受精卵の写真を撮り続けています。

その写真は、PC上でみることができます。



具体的にはどんなメリットがあるの?

次回、解説していきますね!


当院では、日常的にお子さんを望まれているカップルに対して、

体外受精後の受精卵の凍結保存を行っていますが、

その技術を生かして、

がん患者さんの卵子や精子の凍結保存

も行っています。


がんや白血病なども、医学の進歩により治療成績が上昇していますが、

一方で治療による薬や放射線照射により、

将来妊娠できる可能性(妊孕性)が失われてしまう可能性があります。

そのため、治療前に卵子や精子を凍結保存しておくことで、

将来お子さんを得られる可能性を残すことができます。


受精卵は複数の細胞から成るため、

凍結融解後の生存率は当院実績でも99.9%となっています。

しかし、卵子はわずか1個の細胞であることからも、

凍結保存技術は比較的難しく、生存率は90%を上回る程度です。

実際に、日本で体外受精を行っている施設のうち、

がん患者さんの卵子凍結を行っている施設はおよそ3割程度でしかなく、

地域によっては凍結保存を希望されても

叶えにくい状況もあることが考えられます。


当院は「宮城県がん・生殖ネットワーク」に加入しており、

がん治療前の限られた期間の中で施設同士円滑に連携し、

がん患者さんに正しい情報提供を行えるような仕組みが作られています。

具体的には、

①がん治療施設と、東北大学病院や宮城県立がんセンター

といったコーディネーター施設の連携による

凍結保存の情報提供、

②コーディネーター施設と当院などの

凍結保存施設の連携による凍結保存の実施です。


当院は、凍結保存の実施施設として、がん患者さんの体調を最優先しつつ、

安全かつ安心して治療を受けていただけるような取り組みをしてきました。


この度、当院は日本がん・生殖医療学会で認定している

【認定がん・生殖医療施設】として承認されました。

がん治療自体や、卵子や精子の凍結保存といった生殖医療は、

多くの領域かつ多職種(医師、薬剤師、看護師、心理師、検査技師、

栄養士、社会福祉士、培養士など)が関わっています。

がん患者さんに、将来妊娠できる可能性が

失われてしまう可能性があるということ、

凍結保存によってお子さんを得られる可能性を残せることを社会に啓発し、

より高度ながん・生殖医療の提供を実現するための制度

となっています。


今後もがん患者さんに希望を持って治療に臨んでいただけるように、

精度の高い凍結保存技術を提供するとともに、

啓蒙活動にも携わっていければと思います。


培養士:菊地

こんにちは!培養士Aです✨

Wovieはご存知でしょうか?

治療に関する説明を動画でご紹介しております。

この度、「培養士説明」の動画が追加されました!!

体外受精(IVF)は、身体の状態だけでなく、

卵子・精子をみつめていくことになります。

自分の身体の一部とはいえ、分からないことが多いですよね。

実際に培養士から説明をすることがありますが、

1回で理解することは難しい場合や

家でゆっくりみるために説明資料が欲しい!というお声も頂いていました。

そこで!

培養室で多くを語らず黙々と作業している培養士たち…

精一杯の明るい声を動画に入れました!!!(?)

これで、スマホがあれば好きな時にどこでも培養士説明をきくことができます。

これまで使用していた資料とは異なり、アニメーション等を用いて

内容もわかりやすくなっていますので、

培養士の説明をきいたことがある方もぜひご覧くださいね!

現在公開しているのはこちらです。

受精方法について
体外受精の基礎知識
凍結時期について

今後も追加していく予定です。ご期待ください!!!

コロナ禍でウェブ開催が中心となっていた学会でしたが、

だんだんと現地で行われることも増えてきました。

11月に、第66回日本生殖医学会学術講演会が

鳥取で行われ、現地で参加しました!

東北より寒いわけが無いと思い、薄着で挑んだところ季節外れの冷え込みで…

会場の移動が外を経由しなければならず、

休憩所は換気はもちろん、ガラス張りでドア全開!

あつあつコーヒー☕は品切れ!!!凍えました!!!


でも学会の内容はアツかった!!!

テレビ番組さながらに、タレントや医師で討論会が行われ、

産婦人科や不妊治療に関して本音で疑問をぶつけたり、

意見を言い合っていました。

それを参加者は端からみていたわけですが、

これは患者様もききたかっただろうな…

むしろ討論に参加したい方もいるのでは!?といった内容でした。
(内容は非公開のため書けずすみません。)

このような場が今後あることを願います。えらい方お願いします!!!

私自身も発表をしましたが、

名前を間違えられていたのを訂正し忘れるくらい緊張しました。

また参加できるように!日々精進!


寒さにダメージを受けたわけですが、

仙台もかなり冷え込んで、雪もちらつきはじめましたね。

暖かくして過ごしていきたいものですが、

ダメージを受けるといえば精子です。

精子は寒さに弱く、20度を下回ると運動率が低下します。

元気がなくなってしまうというわけです。

当院では、精液を温度変化から守るために

SEEDPODという保温容器を販売しています。

当院での実験結果が記載されていますのでぜひご覧ください

SEEDPOD製品ページ

学会では、保温容器だけでなく、インナーカートリッジを作成して

より保温性を高める実験の発表がありました。

このインナーカートリッジを使用したほうがより長い時間、

20度以上に保つことができるそうです。

当院のデータでも、5度の環境ではSEEDPODを使用しても

1時間経過すると20度以下に温度が低下していました。

真冬に、外を1時間歩いていらっしゃる患者様はいないとは思いますが、

保温容器にいれていても、注意が必要ということがわかります。

また、SEEDPODに入れることにより冷えにくくなりますが、

全く温度が下がらないというわけはありません。

私たちが精液カップを受け取ると、

カップが冷えているなと感じることもあります。

SEEDPODに入れているし!と安心せず

使用方法を今一度確認してみてください。

SEEDPODの蓋を開けて室温(20~25度程度)にしてから

カップを入れることが重要です!

蓋に温度を測るシールが貼ってあるタイプは、

しっかり温度の確認をしてくださいね。

さらに、SEEDPODを保温バッグに入れたり、

タオルで包んだりするとより温度が保たれるかもしれません。

普段、スープジャー等使用するときにするような感じで。

大きめのポケットがあれば、ポケットに入れて

その上から上着を羽織ると体温と上着で、冷えを防げそうですね。


ここまで書きましたが、過度に神経質になる必要はありません。

メンズルームの数は限られているので持参でお願いしている現状です。

ただよりベストに近い状態で精子を持ってきていただきたい!

と思っています。

冬はいままで以上に精子を大事に大事によろしくお願いします。

最後に鳥取で唯一立ち寄れた観光スポットにて。



恥ずかしながら知識が全く無かったので、

翌日アニメをみて勉強しました👻

さらに震えました…。(おやじってホントに親父だったんだあ…)

公式で動画サイトにあがっていますので皆さんもぜひ!(?)

鳥取で妖怪に興味がわいてしまった培養士Aでした。


こんにちは、培養士です。

先日、日本受精着床学会に参加・発表しました。

私の発表内容はマニアックな話ですので、置いといて…。

他施設から妊娠とBMIとの関係について発表がありました。


当院でもBMIのコントロールは治療の一環と考えています。

赤ちゃん作りにはBMI 22がベスト、

最低でもBMI 25を下回ることをお勧めしています。

いい機会ですので高いBMIは不妊治療の

どんなところに影響するか調べてみました!


探してみるとやはり、女性のBMIが高いことは体外受精を行っても

妊娠率・出生率の低下流産率の上昇を引き起こすことが

たくさんの論文から報告されています。


じゃあBMIが高いってどのくらいよ?


BMI 30以上はかなりアウトです

BMI 25以上 も BMI 25未満の方と比べると同じく結果に悪影響を与えます。

さらには妊娠した後も高BMIは

妊娠高血圧症候群、脂質異常症、妊娠糖尿病リスクの増加

などなど良いことは一つも見つけられませんでした

BMIを適正に保つということには妊娠にとってすごく重要なことなんです。


怖いですよね、痩せましょう!


じゃあ妊娠した後にしか影響ないのかな?

そんなことはありませんでした。

女性の高いBMIは月経周期の乱れ、排卵異常のリスクが上がります。

通常であれば月一回チャンスがある自然妊娠も

チャンス減

いつがチャンスか分からない

となってしまいます。

体外受精に進んでもFSHなどのホルモン剤が効きにくい、

発育卵胞 (卵子が入っている袋)の減少、採れる卵子が少なくなる、

一部では、受精率も低くなるとの報告もあります。

良いことはありません


不妊治療にも大事なんですね、痩せましょう!!


ふぅん、じゃあBMIって奥さんだけが影響あるの??

女性だけではなく男性もBMIの上昇は大敵です。

BMI30以上の男性ですと

奥様の自然妊娠、体外受精どちらの妊娠率・出生率も低下しています。

高BMI男性は、精子濃度や精子運動率に影響が出ることもありますが、

普通に精子がいることも多いです。

でもいればいいってもんじゃありません。

一つ一つの精子を見ると ”適性BMIマン” とは違ってきます。

例えば、精子の形が異常であったり、

DNAへ傷 (fragmentation)を負っている割合が高くなります。

つまりは人数はいるけどイケメンも金持ちもいない合コン状態です。

魅力減です

これらは顕微授精を使ったとしても

成功率に影響が出る可能性があるでしょう。


男性もBMIは大事ですね、痩せましょう!!!


ということで、今回の調査結果

『妊娠したいなら夫婦どちらも肥満は大敵』

です

もちろん痩せすぎも良くはありません。

大事なことは適性BMI (22)を保つことです

でもでも自分で頑張っても痩せられないんです…

とお悩みの方もたくさんいらっしゃると思います。

この度当院では、院内管理栄養士による

“栄養相談” を始めさせて頂くことになりました!

ひとりで減量は心が折れそうだな…

そんな方は是非、今できることから一緒に頑張ってみませんか?

少しでも気になった方は、下記画像をご覧ください♪



今回参考にした論文
・Practice Committee of the American Society for Reproductive Medicine  Fertil Steril. 2015
・Rittenberg V. Reprod Biomed Online. 2011.
・Campbell JM. Reprod Biomed Online. 2015.

学術集会、略して「学会」では様々な発表があります。

学会は、新しい知見や技術を仕入れ、

自分たちの考え方や技術の確認、いやいやそれはちょっと違うんじゃない?

なーんてことを考えながら見たり聞いたりしてお勉強をする場所です。

日本卵子学会では多くが受精卵や卵子の話題なのですが、

今回、ちょっと毛色の違うおもしろい発表があったのでご紹介。

皆さんは揮発性有機化合物(VOC)って知ってますか?

Wikipedia先生にお尋ねしたところ・・・

『常温常圧で大気中に容易に揮発する
有機化学物質の総称のことである。』


ということでした。

え?

恥ずかしながら、無学な私はこんな状態でした。

でも、ちょっと調べてみたら・・・

ホルムアルデヒド
 → 住宅の壁紙や床の接着剤とかに使用されているやつ

パラジクロロベンゼン
 → 防虫剤や芳香剤とか

と、具体的になってきました。

さらに身近なもので調べてみますと・・・

「油性マジック」 「柔軟剤」 「香水」 「室内用消臭芳香スプレー」

さて、ここまでくるとピンとくる方々も多いのではないでしょうか。

シックハウス症候群、化学物質過敏症、などはよく耳にしますよね。

最近では 「香 害」 なんてのも聞きます。

これらは、いろんなVOCが関係して起きる症状なんです。

人体に悪いものが受精卵に良いわけない!!

ということで。

当院でも受精卵のお世話をするときに使用する物品は、

すべて水性ペンで記載しています。

では、実際の発表内容がどういうものであったかというと、

このVOCの認知度調査と、

香り付き商品内に含まれている 「マイクロカプセル」

というものの飛散状況の調査でした。

はい、マイクロカプセルです。

え?

名前の通りちっっっちゃいカプセルです。

このちっっっちゃいカプセルは長期間空気中に漂っていることが可能であり、

衣服にずーーっと付着していることもできます。

そして、摩擦などでカプセルが壊れると、

カプセル内に詰められている香料や抗菌剤などが出てくる仕組みです。
(ネット上に分かりやすく説明してくれているサイトとか画像があるのですが…
著作権の問題によりリンクは控えさせていただきますね)




このカプセルの素材にVOCが含まれているため、

カプセルが壊れるたびにVOCが飛散していることになります。

発表者は病院内の様々な場所でこのVOC濃度を計測し、

外来の待合でも多かったことを報告していました。

当院の培養室職員は全職員が制服に着替えて業務を行っています。
(靴下も!)

制服は自宅に持ち帰っていませんし、

制服で院外に出ることも禁止しています。

院内であっても、培養室外に出るときには、原則白衣を着用し、

制服に汚れが付着することを防ぐようにしています。
(厚手生地に長袖なので夏は過酷です…)

また、培養室に入るときには必ず「エアシャワー」と言って、

風によって塵埃を除去する場所を通ってから入室していますよ!
(食品工場の作業員さんとかも入ってる印象ありますね)

実際にVOCの計測をしているわけではありませんが、

できるだけの対策はしていますのでご安心くださいね。

6月にコロナ渦でもひっそりと学会が開催されました。

ひっそり、というのは、多くの学会が

オンデマンド配信による開催になっているからです。

今年の日本卵子学会も、開催地(今回は北海道帯広でした)に行くのではなく、

各自ひっそりと病院の片隅でパソコンを使って

いろんな発表を聞いているわけです。
(昨年はほぼすべての学会がオンライン開催となり、それについては過去記事参照)

例年と違う、今年の学会

日本卵子学会は、生殖補助医療業界3大学会のひとつです。

大きな学会ですと「こういう内容の発表したいです!」と申し込む時期が早く、

卵子学会はいつも1月中に締切がきます。

なので当初は帯広に行くつもりでいたんです。


6月の帯広…ちょっと仙台からは遠いのですが…新緑の季節……

美味しい豚丼…🍚、刺身もうまい……🐡

というかお酒……🍷、北海道限定ビール……🍺

日本酒……🍶

六花亭本店で限定パイ食べたいな……柳月のバームクーヘン……

行きつけのラーメン屋さんまだあるかな……あの居酒屋はあるかな……


というわけで、筆者は帯広に住んでいたことがあるため、

ほわわわわ~~~となっていたんです。

いや、学会がメインですけど、はい、学会がメインですよ!
(大事なことなので2回言いました)

まぁしかし、開催2週間前に北海道でマンボウが発令され、

あえなくほわわ気分は消えました。

実際には、発表者のなかで現地発表できない方は

動画を提出するように学会側から言われており、

ここ仙台でも感染者急増だったため、

現地入りはしない予定ではいたのですけど。



相変わらず私のブログは前置きが長いですが、当院の培養室が発表した内容は、

「精子の酸化ストレスと胚発育の関係性」です。

酸化ストレス検査はまだメジャーとはいえない検査ですが、

最近すごく、すごく、すごーーーーく注目されているんです。

当院でも去年の8月から開始し、ブログでもお話ししていますので、

検査の意味を知りたい方はぜひ読んでくださいね。

酸化ストレス検査について


で。当院の結果がどうだったかといえばですね。

受 精 率 が 下 が る   ことがわかりました!!

治療をしていくうえで、受精卵の発育ももちろん大事なわけですが、

「まず受精しないと!」いけないわけです。ここがスタート地点なので。

ちょっと高いのが難点なこの検査ですが、やる意味はとてもあります。


卵子に関する学会で精子に関する発表をしたわけですが、

今回の発表で「学術奨励賞」をいただきました。

それだけ注目度の高いテーマだということが分かります。

患者さんからよく言われることなのですが。

「前にやっているので大丈夫ですー」

えぇ、前回問題が無かったのならいいかな、って思う気持ちはわかります。

しかし、酸化ストレス値は私たちの生活に大きく左右されるもの。

その時々の体調などによっても変化していきます。

人工授精、体外受精を行うときには検査してもらえると、

治療をしていく上での判断材料にもなり得ます。


ちなみに……。

今、当院では「メネビット」という男性向けサプリメントの

効能を調査する臨床研究を行っています。

「メネビット」は特に酸化ストレス値の

軽減に着目したサプリメントになっています。

参加条件はありますが、6か月間分のサプリメントを無料で提供し、

精液検査や血液検査などを行わせていただく研究になっています。
(もちろん検査費用も無料)

この臨床研究の参加者の方を 大 募 集 中 です。

ご興味のある方、参加希望の方は詳細をご確認の上、

診察券番号を添えて指定のメールアドレスへご連絡ください。


↓詳細はこちらから↓

男性用サプリメントの
臨床研究について




眠くなる春がきたと思ったら、あっというまに湿気と戦う梅雨がきました。

毎朝できるだけ真っ直ぐにセットして家を出るのに、

湿気のおかげで出勤したときには広がってるわ、うねってるわで

悲しい気持ちになる今日この頃、皆様、いかがお過ごしでしょうか。


さて、当院では培養士も患者さんへの説明にどんどん出張っています。
(全国的にみると、実は珍しいそうです)

そこで、患者さんからよく聞かれる質問を紹介、回答してみようと思います。

「受精卵」と耳にすると、皆さん最初に思い浮かぶのは…

こんな感じに、中の細胞がポコポコ割れている状態を

想像する方が多いのではないでしょうか?

この、割れている大きな丸いもの(赤い矢印)1つ1つを

「細胞」といいます。

割れている細胞の数で、「4細胞の受精卵」とか

「8細胞の受精卵」と、呼ばれることになります。

そこで、よくある質問。

「え…3細胞?5細胞???あれ…
奇数ってあるんですか?大丈夫ですか???」

【答え】
大丈夫です。
あります。
普通です。

あ、これで回答終わりじゃないですので。

ちゃんと説明します。

ここから本題。(前置き長い…)

受精卵の発育=細胞の割れ方は、1つの細胞が2つに割れていきます。

2細胞の次は、2つの細胞のそれぞれが2つに分かれます。

このとき、それぞれの細胞が同時に割れるわけではないため、

片方だけが2つに割れた状態になっていれば、それは3細胞となります。

同じように考えると…

これで5細胞の受精卵になります。

こういうわけで、奇数の細胞数はよく見かけますし、普通です、大丈夫です。

本題の方が短くなった気がとってもします。

受精卵はこんな風に割れていきますよ。(映像は4細胞まで)

テーマ:

新年度ですね。



コロナ渦ではありますが、春うららか、眠気を誘う陽気となってまいりました。

年度が変わり、医療技術部のブログ担当者も変わりました。

前任より大分年齢が上がりましたが、より一層にぎやかにお届けしたいと思います。


さて、4月です。(更新が遅れて5月です…)

当院培養室にも新しいメンバーが入ってきました!

そこで、今回のテーマは「胚培養士になる人ってどんな人たち?」


体外受精・顕微授精の治療が日本で始まった当初、

検査技師さんや医師が胚培養士の仕事を兼務していました。


しかし現在では、不妊治療の発展とともに専門性が高くなり、

多くのクリニックで「胚培養士」という

専門の技術屋さんがいるようになりました。

そしてその多くが、農学・動物学系の大学出身者たちです。

ちょっと古い報告にはなってしまうのですが、こんな報告があります。

「我が国における生殖補助医療胚培養士の現状2015」寺田 幸弘先生
日本卵子学会誌 Vol.1 (1), 15–21, 2016

これによりますと、胚培養士の学会認定資格試験が始まった当初、

農学・動物形学系大学出身者の受験者は全体の約30%

医学系出身者約50%でした。

ところが、2015年の受験者では約50%農学・動物学系の大学出身者

医学系出身者約10%と大きく変わってきたのです。

なぜか?

不妊治療の現場で行われている技術のほとんどが、

動物たちで行われている技術由来です。

胚培養士を目指している農学・動物学系出身者の多くは、

哺乳動物である家畜やマウスの卵子、精子ですでに

体外受精や顕微授精を用いた研究をしてきています。

そのため、生殖に関する技術と知識は

ある程度持っている状態でクリニックへ配属されてきますので、

クリニック側としては「期待の新人!!」ということになるわけです。

とはいえですね。

もちろん、すぐに患者さんの卵子や精子を実際に扱うわけではありません。

患者さんからの大事な卵子と精子を扱うことになるため、

学生時代の研究と同じように考えていてもらっては困ります。

研究していた頃の対象はあくまでも

「卵子 or 精子」という「細胞」であったわけですが、

医療現場で相対するのは、

「患者さん」の「卵子 or 精子」です。

「間違ってはいけない世界」というのが、胚培養士の働く世界なので、

クリニックへ配属されるときや、認定試験を受ける際には、

当然ながら高い倫理観も求められることになるわけです。

さて、前出の報告には、胚培養士になる男女比率なるものも載っておりまして。

胚培養士の80%が女性なんだそうです。

まぁ…看護師、事務スタッフ、どこを見渡しても、

医師以外で男性は見かけない職場です。

ぶっちゃけ、ここでいきなり男性の胚培養士が一人入っても、

職場に溶け込むのも大変ですよね。

当院の胚培養士は現在、農学・動物学系出身者が8名、医療系出身者が2名。

男性5名、女性5名(なんと、半分は男性ってことです)

不妊治療は日進月歩です。

ぼーーーっとしていると、知識も技術もおいていかれてしまいます。

全員で、切磋琢磨しながら日々研鑽と勉学に励んでいます。


もし興味がありましたら、こんな書籍も出ています。
エンブリオロジスト 受精卵を育む人たち
こんにちは。医療技術部です。


先日、興奮してピエゾICSI(ピエゾ顕微授精)の記事を書きましたが、

そもそも顕微授精のことを記事にしていませんでした。反省。

改めて顕微授精って何?ということを記事にしてみようと思います。


顕微授精とは?と聞かれたら、

人工授精と体外受精の区別がつかない一般の方でも、

「あーなんか病院で?人工的に?こども作るやつでしょ」

くらいの知識は広がってきていると思います。

実際は、体外の環境で卵子と精子を受精させる方法の一種と

表現するのが妥当かと思います。

体外環境での受精方法は大きく分けて2つ。

通常の体外受精”と“顕微授精”です。


2つの受精方法って何が違うのか?

端的に言えば、精子が卵子に入る過程が違います。

通常の体外受精(ふりかけ法)は、

体内(卵管)で起こるだろう受精の瞬間を体外で再現している方法です。

ですので手技は単純で

“卵子に精子をふりかけて様子を見る”

というものです。

体内と同様に競争に勝った精子が

卵子に侵入し受精が起こる仕組みです。

一方、顕微授精は

人の目で良好精子を判断し人の手で卵子内に精子を入れる”方法です。

ただし、ヒトの手で行うという点が引っかかる方は多いです。
(宗教観や倫理観は人それぞれですしね)

数年前に培養士の岸田♀がART未経験の患者様へ

アンケート調査を行っていました。

ご協力頂いた方々に深く感謝いたします。

「どっちの受精法を選択したいですか?」という質問への回答です。どん‼‼

男性の結果
女性の結果
やっぱりふりかけ法を選ぶ方が多いです。

顕微授精はマイナスイメージってことですね…。

実際に自然の法則にしたがって受精できるに越したことはありませんので、

基本的には不必要な顕微授精はしない方向で治療を進めます。


当院でもレスキュー顕微授精を導入したり、

ふりかけ法の受精率アップを年間目標にしたり…

極力自然の力で受精できるような環境を整えています。

レスキュー顕微授精とは

通常体外受精成績アップへの取り組み

しかし自然の対義語は不自然じゃありません。

自然の対義語は技術です(←担当者の私見)

当院では顕微授精での受精率を上げるために様々な工夫をしています。

①紡錘体観察
②授精時間の調整
③ピエゾICSI
 等

受精率を上げるための工夫をしています。

また、受精操作後から受精までは、

受精卵の成長がタイムラプス動画で観察できる培養器にて培養しながら観察し、

正確な受精の判断を出来るようにしています。

追加料金を頂いて必要な患者様にだけ提供する

というのも1つの手ではありますが、

当院では全ての患者様に一様に提供することで受精卵の獲得数が増え、

結果的には妊娠率の向上、より早い妊娠に繋がると考えています。

自然から少し遠ざかるからこそ、技術をつぎ込む隙間が増えるということ。

通常体外受精は時代遅れ!なんて日も来るかもしれません。

なんなら機械によって顕微授精行われる未来も、すぐ来るかもしれませんね。


あっ顕微授精の時間だ。また次回。