前回に引き続き、培養士Aです。
前編ではタイムラプスがどんなものなのかについて触れました。
今回の後編では、タイムラプスで培養するとどんなメリットがあるのかについて
お話していきます。
①培養環境が安定する
体外受精は文字通り、体外で受精するので体外で育てていきます。
受精卵にとっては女性の体内が成長するためにベストな環境です。
その体内に近づけた環境が、培養器です。
培養器は、温度や二酸化炭素、酸素の濃度を一定に保っています。
外の環境とはかなり違いがあります!
低い温度や高い酸素濃度は受精卵の発育にも影響することがわかっています。
なるべく培養器の中で育てていきたいのですが、
受精卵の様子を観察するときは、培養器から取り出さなければなりません。
↑培養器の外で観察中…
しかし、タイムラプス培養器に入れてあれば、
取り出さずにPC上の写真をみることで受精卵の様子がわかります。
受精卵は、培養器でぬくぬくと安心できますね。
近年では、タイムラプス培養によって胚盤胞発生率や妊娠率が
向上するという報告もあるそうです。
Closed embryo culture system improved embryological and clinical outcome for single vitrified-warmed blastocyst transfer: A single-center large cohort study
②異常分割の観察が可能
異常分割(Abnormal Cleavage)が培養3日目までに観察された受精卵は、
胚盤胞へ発育しにくいことが分かっています。
異常分割がわかると、異常分割が無い受精卵を
優先的に凍結することが可能です。
逆に、タイムラプスを使用しなければ、胚盤胞に成長しないかもしれない、
妊娠する可能性が低い受精卵を移植するリスクがあります。
当院では患者様の希望を伺って、周期ごとにタイムラプスを
使用するかどうか決定します。
タイムラプスは「先進医療」です。
全額自費負担となりますが、保険診療との併用が可能です。
また、治療方針によってはタイムラプスの使用をおすすめする場合があります。
★培養3日目の凍結を考えている方
培養3日目に凍結する=胚盤胞に育つかどうかわからない受精卵を凍結する
ということになります。
なるべく胚盤胞への成長が期待できる受精卵を凍結したいですよね。
タイムラプスで観察して、異常分割がない受精卵を凍結しましょう。
胚盤胞での凍結を考えている方も、もちろん使用できます。
タイムラプスを使用して、受精卵をより安全安心な環境で育てていきましょう。
まだ研究段階ではありますが、
受精卵もより元気に育ってくれるかもしれません。
また、現在のところ当院では受精卵の動画のお渡し等はしておりません。
ご了承ください。
詳しく知りたい方は、培養士や医師にお尋ねください。
受精卵の環境は、私たちが管理しておりますが、
精子も温度が重要です!!!
精子の温度管理についてはこちらのブログをご覧ください。
精子を冷やさないために
毎日あたたかくしてお過ごしくださいね💛